人生橋
この絵に描かれている大黒橋をスケッチしていると、一人の男性が声を掛けてきた。
「この橋、もうすぐなくなるって知ってる?」
「そうなんですか!?知りませんでした…」
僕が驚いていると男性は続けた。
「橋を渡って向こう側は繁華街、こっちは飲み屋街。だから、こっちから向こうに行く人と、向こうからこっちに来る人とで全然違う。お水のねえちゃんが男連れて向こうからこっちに渡ってくると思えば、多分だけど仕事をなくした人がこっちから向こうに行ったり…楽しそうな家族連れやら、ぼぉーっと川を眺めてる悲しそうな人や、夜になるとこの橋の上のところに寝泊まりに来る人。とにかくいろんな人がこの橋を通る。だから俺はこの橋を人生橋って呼んでるんだ。」
確かにホームレスが寝泊まりしたりするので綺麗な橋だとは言い難いが、取り壊されるとなると、小さい頃あの木の下で一休みしたなぁ、などと感慨深くなったりした。
その男性はこの橋が見えるところのビルの所有者で、そこから描かせてもらったのがこの一枚。